エネルギー・環境政策は本来的に、燃料資源の貿易を通じてマクロ経済に影響を及ぼすだけでなく、産業・企業競争力に大きな影響を与え、再びマクロ経済へ波及する重要な国民的課題です。
日本では、2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故を契機に、エネルギー・環境政策は国民的議論として、広く社会に認知されるようになりました。原子力発電については安全神話が崩壊し、再稼働への不安が高まっています。一方で、火力発電で原子力発電を代替した結果、燃料費が嵩み電気料金が上昇、産業界や家計の負担を増大させています。また、原子力発電の再稼働が遅れるなか、同じく発電中に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの導入支援を積極的に行なった結果、再生可能エネルギーの価格保証のための賦課金という国民負担が拡大し続けています。
日本はエネルギー資源に乏しく、近年さらに地政学リスクも高まっていることから、経済性、供給安定性、環境適合性、社会受容性などの点で、万能な電源は現在のところ存在しません。世界的なエネルギー需給構造、技術革新の動向、産業構造の変化も踏まえ、我々はバランスのよいエネルギーミックスを選択しなければなりません。政府はこの国民的課題に対して、科学的根拠を解りやすく示し、社会の同意と理解を得ながら、持続可能性あるエネルギー・環境政策を立案しなければならなりません。
2015年4月、こうした問題意識を共有すべく、さまざまな産業界で活動する女性リーダーによる有識者会議を創設しました。それぞれに独自の知見を持ち寄り、定期的に議論を重ねています。また、従来、比較的エネルギー・環境政策議論に加わる機会の少なかった女性を中心に、公開議論の場も設けています。エネルギー・環境問題に関心を持つ多くの女性たちの参加をお待ちしています。
エネルギー・環境問題に関する
女性有識者会議主催者
慶應義塾大学特任教授
遠藤 典子
エネルギー・環境分野の研究者に加え、三菱重工業、日立GEニュークリア・エナジー、東芝、トヨタ自動車、東レなど製造業、みずほ銀行、日本政策投資銀行、PWC、東京大学エッジキャピタルなど金融サービス企業の幹部、宇宙飛行士、レーシングドライバー、ファッション誌編集者など様々な経験と知見を持つ40名を超える女性有識者が、エネルギー・環境問題について幅広い議論に参加しています。